KANBIN TIME | かんびん たいむ

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KANBIN

An illustrator based in Tokyo and Taiwan.

東京と台湾を拠点に活動するイラストレーター。

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江戸の木を訪ねる-浅草向島編

これがさらに○○編と続くのかはわからないが、浅草向島の江戸の木を訪ねるマップを作った。

参考にしたのは江戸時代に刊行された「江戸見物四日めぐり」。
江戸を4日間でお手軽にまわろうというガイドブックで、宿のある馬喰町から
1日分にしてはちょっとキツくない?という距離を歩いて江戸のいいとこどりをするルートが
合計4日間分ある。

今回のマップは馬喰町から北に向かって船をつかいつつぐるっと廻るルート。
浅草で遊んだり吉原のぞいたりして名所を回るのだが、
その中に象徴的な木がたくさん出てきたのでそれらにフォーカスしたマップにした。

だってよく考えたら、木って生きたまま何百年、ときには千年超えて人々の前に存在し続ける。
建築ばりに象徴的な、時代を超えるランドマークなのだ。
江戸を紹介される本の中でも様々ないわれをもつ木が登場する、つまり当時の人に語られているのだ。


そうした木々が今でも存在するのかしないのか、行ってみないとわからないのもあったのだが
大抵はもうない。昔よりも木は「風景」になってしまってるように思う。
時代が変わるにつれて邪魔となってしまえば切り倒すのもかんたん。
建築ばりの物理的性質を持ちつつも、存在自体は軽んじられているような。

ただ、吉原の「見返り柳」なんかは代を8つもかえて今でも存在している。
モノは違えどそこにいることに意味があるのだ。
燃えてしまった金閣寺の再建みたいでやっぱり建築みたい。

②榧寺のカヤの木についてどうしてもいいたいこと

将棋の盤などで有名なカヤの木は、色々と有用なので寺社などによく植えられていたらしい。
それで改めてどんなかんじで有用なの?と思って調べたら有用・優秀すぎて驚いた。

まず実が優秀。
実そのものもカシューナッツより芳しくてかなり美味しいらしい。
戦後の食糧難時代、このカヤの実に救われた人がたくさんいそう。
そして実からは油がとれるので主に燈明に使われていた。
他にもてんぷらあげたり、整髪料にしたり、寄生虫を駆除したり。
葉っぱをいぶすと蚊遣りになって蚊も寄せ付けない。
どんな匂いなんだろうか…


将棋や碁盤に使われる材は緻密で狂いもなく柾目がきれい。
それに加えて水やシロアリにも強いから建築土台なんかにも使えちゃう。

あとは仏像…緻密ならぜひ彫りたいよなあ。
平安〜鎌倉時代に関東で作られた仏像はほとんどカヤの木だというから
今後、仏像を見る目にプラスアルファの視点だ。

さて、榧寺のカヤに関してはマップにもあるように火伏せのご利益があった。
度重なる大火も、榧寺の門前で止まり人々の信仰を集めたそうな。
そもそも正覚寺という名前だった寺が、このカヤの木のおかげで「カヤデラ」に
なっちゃったんだからその存在は大きい。
偉大な木だ。

他にも、「蔵前」の由来になった幕府のお米蔵が並んでいたところには
象徴的な松があって、吉原に遊びにいく人が「今宵も首尾よく行くように…」と
思いながら眺めていたり、そんな吉原遊びから帰るときに
「ああ素敵な夜だったな」と名残惜しく振り返った吉原大門そばに柳があったり。

石浜神明宮は今じゃガイドマップにもそんなに出てこないけれども
隣の真崎稲荷とともに伊勢神宮のかわりとしてお参りするような
人気の場所で、境内は荘厳な森だったり。

墨田堤は洪水対策のために植えられた桜並木だけど
桜は何百年も日本人の大好きレジャーNO.1なので
今もご無事に華やかな姿を見せていたり。

能の名作「隅田川」に出てくる梅若丸伝説の
梅若丸が弔われた柳の木は、どうやら、もうないらしいぞ!?
…と寂しくなったり。

梅屋敷は360本の梅のほかに一年を通して常に花が咲くようになっていて
今も激安入場料を払えばその光景が楽しめる公園だったり。

Googlemap上の存在感がうすすぎる秋葉権現は
紅葉も見事だったし、聖なる水がわく松もあったとか。
見る影もなさそうだなあ。

もはや地表らしき地表はすべて人工物に覆われかけている東京の街に
かつていた「大事な木」たちを思いながら
歩いてみたい。